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2008.05.23
商業登記,企業法務

債権譲渡・動産譲渡登記

債権譲渡登記

債権譲渡の対抗要件について

民法467条は,債権を譲渡した場合,その債権の譲受人が債務者に対して自分が債権者であることを主張するためには,譲渡人から債務者に対して債権譲渡の事実を通知するか,債務者の承諾を得なければならないこととされています。
また,その債権譲渡の事実を債務者以外の第三者,すなわち,債権の二重譲受人,差押債権者,破産管財人などに対して主張するためには,この債務者への通知または承諾の手続は,確定日付ある証書によって行わなければならないとしています。
このように,債権譲渡の事実を債務者や第三者に対して主張するための法律要件が債権譲渡の対抗要件といわれるものです。

債権譲渡登記制度による対抗要件の特例について

債権流動化などの目的で,法人が多数の債権を一括して譲渡するような場合には,債務者も多数に及ぶため,すべての債務者に民法所定の通知などの手続をとらなければなりません。
そうすると,手続・費用の面で負担が重く,実務的に対抗要件を具備することは困難となります。
そこで,債権譲渡の第三者対抗要件に関する民法の特例として,法人がする金銭債権の譲渡等については登記をすることにより債務者以外の第三者に対する対抗要件を得ることができるとしたものが,債権譲渡登記制度です。

債権譲渡登記の効果

債権譲渡登記により債権の存在や譲渡の有効性を証明するものではありません。
しかし、債務者以外の第三者との関係で、民法上の確定日付ある証書による通知があったものとみなされるという効果があります。
債権譲渡登記制度においては,登記の真正を担保するために譲渡人と譲受人が共同して申請しなければなりませんが,仮に,譲渡人および譲受人が通謀して虚偽の登記を申請し,実際に生じていない債権や既に消滅した債権について債権譲渡登記がされたとしても,これによって譲渡の対象となった債権の存在が公的に証明されるわけではありません。

債務者の留意点

債権譲渡の通知を受けた場合,債務者は以下の点に留意して対応する必要があります。
まず,債権者から債権譲渡の通知を受けた場合または債権を譲り受けた者から登記事項証明書の交付を伴う債権譲渡通知を受けた場合においては,債務者は,その後は,債権の譲渡を受けた者を債権者として扱えばよいこととなります。

債権譲渡登記制度の見直し

平成17年10月3日に「債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」(平成16年法律148号)が施行され,債権譲渡登記制度については,企業が有する資産を有効に活用し,更なる資金調達の円滑化・多様化を図るため,債務者が特定していない将来債権の譲渡についても登記によって第三者に対する対抗要件を備えることが可能となりました。

 

 

 

動産譲渡登記

動産譲渡登記ファイルに記録することにより、動産の譲渡について民法第178条の引渡しがあったものとみなされ、第三者対抗要件が具備されます。
譲渡人は、法人のみに限定されています。
譲渡の目的(担保目的譲渡か、真正譲渡か)は問われません。
個別動産、集合動産のいずれも登記することができます。
代理人が動産を占有する場合も、登記することができます。

動産譲渡登記を取り扱う登記所

動産譲渡登記を取り扱う登記所(動産譲渡登記所)として、東京法務局が指定され、全国の動産譲渡登記に関する事務を取り扱っています。
また、譲渡人の本店等の所在地を管轄する登記所に、動産譲渡登記事項概要ファイルが備えられ、動産譲渡登記所からの通知に基づき、当該譲渡人の商号・本店及び当該譲渡の概括的な内容(譲渡された動産を特定する事項は含みません。)が記録されることとなっています。
(注 )譲渡人が外国会社であって、日本における営業所が複数あるときは、動産譲渡登記申請書において示された営業所の所在地を管轄する登記所に対してのみ通知されます。

登記の対象及び効力

動産譲渡登記の対象は、「法人が行う」動産の譲渡に限定されています。譲渡の目的(担保目的か、真正譲渡か)については、特に制限はありません。
動産譲渡登記がされると、当該動産について、民法第178条の引渡しがあったものとみなされ、対抗要件が具備されます。したがって、同一動産について二重に動産譲渡登記がされた場合の譲受人相互間の優劣は、登記の先後によって決せられ、また、動産譲渡登記と民法第178条の引渡しが競合した場合は、登記がされた時と引渡しがされた時の先後によって決せられることとなります。
なお、動産譲渡登記は,動産の譲渡の事実を公示するものであって、この登記により動産の存在やその所有権の帰属を証明するものではありません。
また、動産譲渡登記は動産譲渡ごとに独立の登記として動産譲渡登記ファイルに記録されるので、登記された動産がさらに転々譲渡されて登記された場合においても、当該動産が転々譲渡されていく経緯が一個の登記をもって公示されるわけではありません。
*動産譲渡登記では、「登記の年月日」に加えて「登記の時刻」も記録されるため、登記された時が明確になります。

動産の特定方法について

譲渡の対象たる動産を特定し、公示するための情報としては、必須の記載事項である「譲渡に係る動産を特定するために必要な事項」と、当事者が任意に記録することのできる「有益事項」があります。
「譲渡に係る動産を特定するために必要な事項」の記録方法としては、a動産の種類及び特質によって特定する方法(個別動産)と、b動産の種類及び所在によって特定する方法(集合動産)の2つがあり、いずれかの方法を選択することができます。
在庫商品など日々内容が変動する(流動)集合動産の場合には、通常、bの方法により登記することになります。この場合、原則として、当該所在場所にある同種類の動産のすべてが譲渡に係る動産となり、当該所在場所に搬入された時点で動産譲渡登記の効力が及ぶこととなります。